2022年7月21日、中国のBYDが2023年から日本の乗用車市場への参入することと導入予定モデル3車種を発表しました。今回は、BYDがどのようなメーカーなのか、日本に導入されるモデルはどのようなモデルなのかを紹介します。
BYDとは?
そもそもBYDとは、1995年に中国・深センで創業したバッテリーメーカーです。現在では、ITエレクトロニクス、⾃動⾞、新エネルギー、都市モビリティの4つの領域で事業をグローバルに展開しています。
バッテリーメーカーとして創業した背景があることから、モーターやコントローラーなど、電気⾃動⾞のコアとなる技術を⾃社で開発・製造していることが特徴です。
⾃動⾞事業においては、世界70以上の国と地域、400以上の都市にNEV(New Energy Vehicle:EV、PHEV、FCVの中国における総称)を展開し、中国国内で9年連続でNEV販売台数第1位となりました。2021年には、約60万台のBYDのNEVを販売しました。
日本における展開
2005年に⽇本法⼈「BYDジャパン」を設⽴しました。ソーラーパネルや産業⽤蓄電システムなどの環境エネルギー事業、電気⾃動⾞事業などを展開しています。
電気⾃動⾞事業では、これまで主にEVバスとEVフォークリフトを展開してきました。2015年には、中国の⾃動⾞メーカーとして初めて⽇本国内に電気バスを納⼊。現在では、岩⼿県から沖縄県まで公共交通⽤途など65台を納⼊し、国内EVバスのシェア7割を占めています。EVフォークリフトは、物流倉庫業界、機械・製造業界、製紙業界など幅広い業界に約400台を納⼊しています。
日本市場へ乗用車を導入する背景
BYDが日本市場へ乗用車を導入する理由は、カーボンニュートラル社会を実現するためです。
また、BYDジャパンが行った調査では、「車両価格の高さ」、「充電設備の不足」、「航続距離への不安」、「ラインナップの少なさ」などが、日本における電気自動車の購入のハードルになっていることがわかったとのこと。そこで、高い安全性と航続性能を持ち、さまざまなボディタイプのEVを手が届きやすい価格で展開してきたBYDが、日本におけるEVの選択肢のひとつとなるために、日本の乗用車市場へ参入することを決めたとのことです。
日本に導入されるモデル
BYDジャパンが販売を予定しているモデルは、「ATTO 3(アットスリー)」、「DOLPHIN(ドルフィン)」、「SEAL(シール)」の3車種です。
2023年1月に発売予定の「ATTO 3」を皮切りに、2023年中頃に「DOLPHIN」、2023年下半期に「SEAL」の発売を予定しています。
最新のテクノロジーが満載のスタイリッシュなミドルサイズSUV「ATTO 3(アットスリー)」
ATTO 3は、2022年2⽉に中国で販売を開始し、シンガポールやオーストラリアなど中国国外でも好評のミドルサイズSUVです。
BYDが独自開発した「ブレードバッテリー(安全性が高いBYD自社開発のリン酸鉄リチウムイオン電池)」をEV専⽤のプラットフォーム「e-Platform 3.0」に搭載しています。航続距離は、WLTC値で485kmです。また、フラットな床面によって、広い⾞内空間と440Lの荷室容量を実現しています。
【ATTO 3の主要スペック】
・全⻑×全幅×全⾼:4,455mm×1,875mm×1,615mm
・ホイールベース:2,720mm
・駆動⽅式:FWD(前輪駆動)
・⾞両重量:1,750kg
・乗⾞定員:5名
・モーター出⼒/トルク:150kW/310Nm
・電池容量:58.56kWh
・航続距離(WLTC値):485km
・ボディカラー:ブルー、レッド、ホワイト、グリーン、グレー
・⽇本発売時期:2023年1⽉
※2022年7⽉21⽇時点の情報
日常に溶け込むサイズでさまざまなライフスタイルにマッチするコンパクト「DOLPHIN(ドルフィン)」
DOLPHINは、2021年8⽉に中国で販売を開始したコンパクトサイズのハッチバックです。
デザインは、海からインスピレーションを得て、エクステリアとインテリアの随所にイルカをイメージしたデザインが施されています。また、プラットフォームに「e-Platform 3.0」を採⽤し、航続距離(WLTC値)471kmを可能としていることも特徴です。
ラインナップは、スタンダードとハイグレードの2種類。両グレードに交通標識認識システムや誤発進抑制機能などの充実した安全装備を標準搭載しています。
【DOLPHINの主要スペック】
・全⻑×全幅×全⾼:4,290mm×1,770mm×1,550mm
・ホイールベース:2,700mm
・乗⾞定員:5名
・駆動⽅式:FWD(前輪駆動)
・グレード:スタンダード/ハイグレード
・モーター出⼒:70kW(スタンダード)、150kW(ハイグレード)
・電池容量:44.9kWh(スタンダード)、58.56kWh(ハイグレード)
・航続距離(WLTC値):386km(スタンダード)、471km(ハイグレード)
・⽇本発売時期:2023年中頃
※2022年7⽉21⽇時点の情報
BYDの最新技術を結集したハイエンドなセダン「SEAL(シール)」
SEALは、ハッチバックのDOLPHINと同じく海からインスピレーションを得たスポーティかつエレガントなデザインのEVセダンです。
2022年5⽉に発表したモデルで、航続距離が555km(欧州WLTP値)に達します。⾼い安全性と⻑い航続距離を誇るSEALは、BYDの最先端技術が結集されたハイエンドなセダンです。
【SEALの主要スペック】
・全⻑×全幅×全⾼:4,800mm×1,875mm×1,460mm
・ホイールベース:2,920mm
・乗⾞定員:5名
・グレード:スタンダード/ハイグレード
・駆動⽅式:RWD(スタンダード)、AWD(ハイグレード)
・モーター出⼒:230kW(スタンダード)、フロント160kW+リア230kW(ハイグレード)
・電池容量:82.56kWh
・航続距離(欧州WTLP値):555km
・⽇本発売時期:2023年下半期
※2022年7⽉21⽇時点の情報
BYDの日本における今後の展開
BYDは、2023年1月から順次日本へ乗用車を導入するだけでなく、代理店を通じて販売およびアフターサービスを提供する体制を構築するとしています。
また、ブランドパーパスとして「eモビリティを、みんなのものに。」を掲げ、日本全国の人たちにとってeモビリティが身近なものとなるよう、取り組みを進めていくとのことです。
今後、販売網やサービス網の整備だけでなく、ラインナップも拡大する可能性があるBYD。価格次第では、国産のEVよりも売れる可能性もあります。BYDは、今後の続報や展開が楽しみなメーカーといえるでしょう。