日本市場向け軽自動車の商品企画やプロジェクトマネジメント等を行ってきた日産自動車と三菱自動車の合弁会社の「NMKV」が、2022年度初頭に軽自動車のEV(電気自動車)を発売する予定となっています。今回は、まもなくデビューを予定している軽EVがどのような車なのか紹介するとともに、サイズや価格なども解説。軽EVは、日常の足として便利なEVなのか考察していきます。
日産は2019年に軽自動車クラスのEVを初公開して軽EVの発売を明言
日産は、軽自動車クラスのEVを2019年の東京モーターショーで初公開しました。
「ニッサン IMk」として出展したコンセプトカーは、ボディサイズが全長3,434mm、全幅1,512mm、全高1,644mmとなっています。また、「新開発のEVプラットフォームを採用し、軽自動車クラスというコンパクトなボディサイズでありながら、これまでの常識を覆すEVならでは力強くスムーズな走りと驚きの静粛性を実現する革新的なシティコミューター」と発表されました。
コンセプトカー「ニッサン IMk」は、軽自動車の規格(全長3,400mm以下、全幅1,480mm以下、全高2,000mm以下)よりも、全長と全幅が大きくなっていますが、日産の軽自動車として販売されているデイズを彷彿とさせるスタイリングから軽自動車のEVとして話題となりました。
2021年に軽EVの価格・バッテリー容量・サイズが明らかに!
2021年6月に日産は、「三菱自動車水島製作所においては、日産・三菱自動車の協業としては初となる新型軽EVの生産開始に向けて、80億円規模の投資を実施し、NMKVは両社と連携して本プロジェクトを推進しています」と発表。このことからも軽自動車のEV開発が着々と進んでいることが明らかとなりました。
そして、2021年8月に日産は「軽クラスの電気自動車を2022年度初頭に発売」と発売時期について発表し、「この軽EVは、軽の概念を覆すEVならではの力強い加速、滑らかな走り、そして高い静粛性を兼ね備えるモデルです。さらに、運転支援技術をはじめとする、様々な先進技術も搭載します。バッテリーの総電力量が20kWhとなる本モデルは、安心して日常で使用できる航続距離を確保するとともに、EVバッテリーに蓄えた電気を自宅へ給電することで家庭の電力として使用することも可能です。もしもの時には『走る蓄電池』となり、非常用電源として充分な能力を発揮します。車両寸法は、全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,655mmと、取り回しも優れ、非常に運転し易いモデルです。なお、お客さまの実質購入価格は約200万円からとなる見込みです」と明らかにしました。
2021年8月時点の発表では、ボディサイズが軽自動車規格になっていること、価格が200万円~になること、バッテリー容量が20kWhになることが明確となりました。
200万円の軽EVは割高?!
日産が公表した軽EVのサイズである全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,655mmは、日産 デイズ/三菱 ekワゴンといった軽ハイトワゴンとほぼ同等の大きさです。そのため、室内空間にゆとりがある軽EVと言えるでしょう。
価格は、ボディサイズがほぼ同等の日産 デイズより75万円以上、三菱 ekワゴンより68万円以上高くなる見込みです。なお、デイズ/ekワゴンよりも全高が高く頭上空間が広いスーパーハイトワゴンの日産 ルークス/三菱 ekスペースカスタムの上級グレードとほぼ同等の価格となっています。
このことからも軽EVは、同サイズ・同クラスの軽自動車よりも割高と言えるでしょう。
そして、航続距離に影響するバッテリー容量は、日産の発表によると20kWhです。このバッテリー容量は、日産 リーフの半分以下となっています。
リーフの40kWhバッテリー搭載モデルの1充電あたりの走行距離(WLTCモード)は281km~322kmです。単純計算になりますが、リーフ(40kWhモデル)の半分の航続距離と考えた場合、軽EVの航続距離は140km~161kmとなります。
よって、軽EVは日常の買い物や通勤には使えるものの、休日のロングドライブには不向きと言えるでしょう。
三菱は東京オートサロン2022でコンセプトカー「K-EV concept X Style」を発表
三菱自動車は、2022年1月にルノー・日産・三菱自動車アライアンスのロードマップを発表し、軽EV専用プラットフォームをはじめ、5つのEV専用共通プラットフォームを開発し、業界最多レベルのラインナップを提供すると発表しました。
また、2022年1月に開催された「東京オートサロン2022」では、コンセプトカーの「K-EV concept X Style」を世界初披露しています。「K-EV concept X Style」は、三菱の軽自動車として販売されているekクロスと同様のスタイリングの軽EVです。
コンセプトカーの「K-EV concept X Style」は、2022年度初頭に発売予定の軽EVのコンセプトカーで、運転がしやすい軽自動車ならではの魅力、滑らかで力強い加速や静かで上質な乗り心地が特徴の電気自動車の魅力、先進の運転支援機能やコネクティッド機能を両立したモデルと発表されています。
三菱が東京オートサロン2022に出展した軽EVのサイズやバッテリー容量など詳細スペックは公開されていないものの、日産と三菱が共同で開発していることから、日産の軽EVと同等のパワートレインを搭載したEVになるといえるでしょう。
軽EVは日常の足に適した存在になるのか?!
軽EVは、全長3,400mm以下、全幅1,480mm以下、全高2,000mm以下という軽自動車規格のEVで、運転がしやすく、日常の足として最適な存在になるでしょう。しかし、日産が公表したバッテリー容量20kWhで販売された場合、航続距離が短いことがデメリットとなります。
現在、軽自動車を通勤に使っていたり、ファミリーカーとして使っていたりするユーザーが、航続距離の短い軽EVに乗り換えると日常使いはできるものの、バッテリー残量が少なくなってきたときに充電しなければならないことから、休日の遠出で不便に感じる可能性が高いです。
現時点(2022年4月時点)における日産や三菱の情報では、充電性能が明らかにされていないため、充電時間がどのくらい必要なのか、急速充電と普通充電の両方に対応しているのかということはわかりません。
もし、軽EVが急速充電に対応していれば、短時間である程度の充電ができるため、遠出をしたときに出先で不便に感じることが少ないでしょう。しかし、普通充電のみの対応となった場合、出先や街中で普通充電器を探すのに苦労したり、充電時間が長かったりするなど不便に感じることが多いと言えます。
軽EVは、充電の方法や充電性能によって、自宅で充電して買い物や通勤などの日常使いがメインのシティコミューターになるか、日常使いから休日のドライブまで利用できる従来の軽自動車のような万能EVになるかが決まるでしょう。
まとめ
軽EVは、エンジンを搭載する軽自動車と比較すると、スムーズで力強く静かな走りができるコンパクトな車ということがメリットです。一方、軽自動車規格によってボディサイズが限られているため、バッテリー容量が小さくなり航続距離が短くなりやすく、価格が高くなりやすいといったデメリットがあります。
現時点(2022年4月時点)で日産・三菱が公表している情報では、正確な航続距離や充電性能が明らかとなっていないため、シティコミューターになるか、従来の軽自動車と同じように日常使いから休日のドライブまで利用できるかどうかわかりません。
2022年度初頭に予定している軽EVの続報を待って、航続距離や充電性能の情報が明確になってから、購入するか検討することをおすすめします。