トヨタは、2021年12月にバッテリーEV(電気自動車)戦略説明会を開催し、BEV全16車種を公開。また、2030年までにBEV(バッテリーEV)を30車種展開し、年間350万台販売することも明らかにしました。今回は、今後本当にBEVが販売されるのか考察すると共に、2021年12月に公表されたBEVがどのようなモデルなのか、現時点(2022年4月時点)で販売が予定されているBEVはどのようなモデルがあるのか紹介します。
2021年12月に発表されたトヨタのバッテリーEV戦略
2021年12月14日、トヨタはバッテリーEV(以下BEV)戦略に関する説明会を開催。説明会では、2030年までに30車種のBEVを展開し、グローバル販売で年間350万台を目指すとしています。
また、LEXUSブランドでは、グローバル販売台数100万台(トヨタのグローバル販売台数350万台のうちLEXUSブランドが100万台)を目指し、北米・欧州・中国では100%BEVにすると発表しました。
さらに、LEXUSブランドは、2035年にグローバルでBEV100%を目指すとしています。そして「LEXUSは、2030年までにすべてのカテゴリーでBEVのフルラインナップを実現する」と発表していることからも、トヨタがBEVに積極的だと言えるでしょう。
しかし、2021年12月の説明会でトヨタは「全方位戦略」の一部として、BEVのラインナップを拡充させることを強調しています。年間350万台という販売台数は、トヨタの年間販売台数の約35%ほどです。BEVの他にもFCEV(燃料電池車)などさまざまな選択肢を残すとしています。
トヨタは、世界的なEVシフトによってBEVのバリエーションを増やすとしているものの、あくまでもさまざまなパワートレインをラインナップする全方位戦略の一部であり、BEV以外の選択肢を残しつつ、市場の動向を見ながら今後の方向性を決めていくという戦略をとるようです。
では、BEV戦略説明会で披露された「bZシリーズ」、「レクサスのEV」、「トヨタのEV」には、どのようなモデルがあるのか紹介します。
トヨタbZシリーズ5車種
2021年12月の説明会では、トヨタのBEV専用車「bZシリーズ」が5車種が公開されました。
ラインナップは、スバルと共同開発されたSUVの「bZ4X」、ミドルサイズSUVの「bZ Compact SUV」、コンパクトSUVの「bZ Small Crossover」、ミディアムクラスのセダン「bZ SDN」、3列シートも可能なラージクラスのSUV「bZ Large SUV」の5車種です。
bZ4X以外の4車種の中で販売される可能性が高いのは、日本を視野に入れている「bZ Small Crossover」でしょう。また、セダンの「bZ SDN」もドアノブや給電口がみられることから、販売される可能性が高いと言えます。
では、それぞれの車種の特徴を解説します。
bZ4X
bZ4Xは、スバルと共同開発したSUVで、2022年5月12日に発売する「bZシリーズ」第1弾モデルです。いよいよ発売されるトヨタのBEVですが、電池性能・メンテナンス・残価に関する不安の解消、電池を全数管理、3R(リビルト・リユース・リサイクル)を含め、無駄なく使いカーボンニュートラルに貢献するため全数リースでの販売となります。一般ユーザーがbZ4Xに乗る場合は、サブスクの「KINTO」を利用しなければなりません。なお、価格は前輪駆動が600万円、四輪駆動が650万円となっています。
bZ Compact SUV(コンパクトSUV)
bZ Compact SUVは、豊田章男社長曰く「BEV新時代を予感させる美しいシルエットをもつミディアムクラスのSUV」となっており、クーペのように流れるルーフライン、左右に張り出したタイヤなどにより、踏ん張り感があるスタイリングのモデルです。また、ボディサイドのプレスラインがC-HRのような形状になっているのも特徴的で、一部ではC-HRの後継車種ではないかと言われています。
bZ Small Crossover(スモールクロスオーバー)
bZ Small Crossoverは、bZシリーズの中で最もコンパクトなクロスオーバーSUVで、ヨーロッパや日本の市場を意識したモデルとなっています。室内は、コンパクトなボディサイズでありながら快適とのことです。また、電費性能にもこだわり、1kmあたりに必要なエネルギー量125Whを目指しています。日本を意識していると発表されていることからも、日本市場に導入される可能性が高いでしょう。
bZ SDN(セダン)
bZ SDNは、今回発表されたbZシリーズの中で唯一SUVではないモデルです。ワイド&ローを強調するライトまわりの形状やバンパーデザイン、クーペライクなルーフラインによりスタイリッシュなミディアムサイズのセダンとなっています。
bZ Large SUV(ラージSUV)
bZ Large SUVは、ファミリーカーとしても使える3列シートも可能なラージクラスのSUVで、フラットなショルダーラインやルーフラインにより、室内空間にゆとりがあることを感じさせるデザインとなっています。厚みと押し出し感があるフロントフェイスに四角いタイヤハウスが特徴のSUVがbZ Large SUVです。
4車種公開されたLEXUS(レクサス)のBEV
LEXUSのBEVは4車種が公開されました。2021年12月のBEV戦略説明会では、LFAの開発を通じてつくりこんだ「走りの味」を他のモデルにも展開すると発表し、次世代のBEVスポーツカーを公開。さらに、2022年4月20日に発表となったレクサス初のBEV専用モデル「RZ」も公開されていました。
LEXUSのBEVラインナップは、スポーツモデルの「Lexus Electrified Sport」、2022年4月20日に発表された「Lexus RZ」、セダンの「Lexus Electrified Sedan」、ラージサイズSUVの「Lexus Electrified SUV」です。
2022年4月20日に発表された「Lexus RZ」以外の3車種の中で発売される可能性が高いのは、ドアノブなどの確認ができるセダン「Lexus Electrified Sedan」でしょう。また、レクサスの佐藤恒治CBO(Chief Branding Officer)が「今後スポーツBEVの開発を通じて、次のステージに向かっていきます」と発言していることから、LEXUSのフラッグシップスポーツカーとして「Lexus Electrified Sport」が販売される可能性も高いと言えます。
では、それぞれの車種の特徴を解説します。
Lexus Electrified Sport(レクサス・エレクトリファイド・スポーツ)
Lexus Electrified Sportは、LEXUSのフラッグシップスポーツカーであるLFAの開発を通じて作り込んだ「走りの味」を継承する次世代のBEVスポーツカーとして公開されたモデルです。細くてシャープなL字型のポジショニングライトや低くワイドなスタイリングは、一目で優れた走りを予感させるデザインとなっています。次世代のフラッグシップスポーツカーとして期待が高まる1台です。
Lexus RZ(レクサスRZ)
Lexus RZは、2022年4月22日に発表されたLEXUS初のBEVです。LEXUSのブランドアイコンでもある「スピンドルグリル」を思わせるフロントフェイスやL字型のポジショニングライトなど、LEXUSであることがすぐにわかるスタイリングとなっています。詳しくは、後述する「現時点で市販が予定されているEV」をご覧ください。
Lexus Electrified Sedan(レクサス・エレクトリファイド・セダン)
Lexus Electrified Sedanは、クーペのようなルーフラインが特徴のセダンです。短めの前後オーバーハングやスポーティなスタイリングから、ISの後継モデルになる可能性が高いでしょう。
現在販売されている3代目ISは、2013年にデビューし、2022年時点で約9年にわたり販売されています。そろそろフルモデルチェンジの時期になっていることから、次期ISがBEVのLexus Electrified Sedanになってもおかしくありません。また、Lexus Electrified Sedanにはドアノブなどが見られることからも市販化を視野に入れていると推測できます。
Lexus Electrified SUV(レクサス・エレクトリファイド・SUV)
Lexus Electrified SUVは、ラージサイズのSUVでトヨタの「bZ Large SUV」とほぼ同じショルダーライン、ルーフライン、ボディのプレスラインが見られます。厚めのフロントフェイスやスピンドルグリルをモチーフとした表情によりLEXUSらしさを感じられるラージSUVと言えるでしょう。
7車種公開されたトヨタのBEV
2021年12月に公開されたトヨタのBEVは「bZシリーズ」だけではありません。コンパクトカーからSUVやピックアップトラックまで、さまざまなカテゴリーのモデルが披露されました。ここからは、「bZシリーズ」以外のトヨタのBEVを紹介します。
Mid Box(ミッドボックス)
Mid Boxは、ワンボックスタイプのEVコンセプトカーです。リアにスライドドアが採用されているように見えることから、扱いやすいサイズのファミリーEVと言えるでしょう。ただ、2021年12月の公表時点ではコンセプトカーであるため、いつ販売されるかは未定です。
Micro Box(マイクロボックス)
Micro Boxは、2つの箱を縦に重ねたようなスタイリングをしているコンパクトなワンボックスEVです。注目すべきは、ナンバープレートのカラー。他のBEVが白のナンバープレートを付けていたり、ヨーロッパのナンバープレートのような横長のプレートを付けていたりするのに対し、Micro Boxだけは黄色のナンバープレートを付けています。つまり、EVの軽自動車なのではないかと予想できるのです。Micro Boxが実際に販売されれば、買い物や送迎など日常使いができるセカンドカーのようなモデルになるでしょう。
SPORTS EV(スポーツEV)
SPORTS EVは、低いボンネット、盛り上がったフェンダーやフェンダーからつながるリアのエアインテークなどにより、躍動感あるスタイリングとなっています。また、トヨタが展開しているスポーツブランド「GR」のエンブレムを確認できることから、GRブランド初のスポーツEVになるのではいかと予想できます。SPORTS EVは、Lexus Electrified Sportと兄弟車になるのか、それともGRオリジナルモデルになるのか気になるモデルです。
Crossover EV(クロスオーバーEV)
Crossover EVは、カローラクロスやヤリスクロスのようなクロスオーバーSUVです。車種名が書かれたナンバープレート、ドアノブ、ドアミラーなどがあることから、市販化される可能性が高いと予想できます。今後の続報に期待が高まるBEVです。
Compact Cruiser EV(コンパクトクルーザーEV)
Compact Cruiser EVは、フロントグリル内の「TOYOTA」ロゴ、縦長のドアミラー、直線的で無骨なスタイリングが特徴のSUVタイプのEVです。かつてトヨタが2010年から2018年まで日本で販売していたFJクルーザーを彷彿とさせるデザインとなっています。
Pickup EV(ピックアップEV)
Pickup EVは、北米で販売されているタコマのようなスタイルの4ドアピックアップトラックです。北米で人気のあるピックアップトラックをBEV戦略説明会で公開したことから、アメリカでトヨタがEVを販売する見込みがあることがわかります。今後、トヨタがアメリカでどのようなBEVを販売していくのか、ピックアップトラック以外のラインナップを増やすのか、続報を待ちましょう。
Small SUEV(スモールSUEV)
Small SUEVは、台形に広がるフロントグリルが特徴的なコンパクトサイズのクロスオーバーモデルです。ドアミラーやドアノブなどがあることから、販売される可能性が高いモデルと言えるでしょう。今後の続報が気になる1台です。
現時点で市販が予定されているEV
トヨタは、2022年4月12日にスバルと共同開発した新型BEV「bZ4X」を同年5月12日に発売すると発表しました。また、LEXUS初のBEVである「RZ」を2022年4月20日に発表。それぞれどのような車なのか、簡単な概要とスペックを解説します。
トヨタ bZ4X
トヨタ bZ4Xは、スバルと共同開発したBEVで、2022年5月12日に発売するSUVタイプの電気自動車です。トヨタのEVシリーズである「bZ」第1弾モデルとなっています。
デザインは、細く横長に光るポジショニングライトや横一文字のリアコンビランプ、左右に張り出したフェンダーなどにより、ワイド感のあるSUVらしい力強いスタイリングが特徴です。インテリアは、乗員を包み込むような形状のフラットなダッシュボードや視認性が高いメーターなどにより、先進的かつ落ち着きのある空間を演出しています。
ボディサイズは、全長4,690m、全幅1,860mm、全高1,650mm、ホイールベース2,850mm。バッテリー容量は71.4kWhで、1充電あたりの航続距離は前輪駆動モデルが599km、四輪駆動モデルが540kmとなっています。
出力は、前輪駆動モデルが最高出力150kW/最大トルク266Nm、四輪駆動モデルが160kW/337Nmとなっています。
価格は、前輪駆動モデルが600万円、四輪駆動モデルが650万円。ただし、販売はリースのみとなっており、一般ユーザーがbZ4Xに乗る場合はサブスクの「KINTO」を利用することになります。
LEXUS RZ
LEXUS RZ(RZ 450e)は、2022年4月20日に発表されたLEXUSブランド初のBEV専用車です。
エクステリアは、BEVの機能的な進化や空力性能向上を目指して「スピンドルボディ」という塊感や一体感のある造形となっており、一目でLEXUSだとわかるデザインを採用しています。サイドは、フロントタイヤのフェンダーから始まる抑揚のあるプレスラインにより、躍動感を演出。リアは、横一文字のリアコンビランプや台形型のバンパーデザインにより、安定感あるスタイルとしています。
インテリアは、ドライバーを中心とした広がり感ある造形で、ウルトラスエードを施したドアトリムオーナメントやシート、木目調のコンソールアッパーパネルにより上質感のある空間となっています。
ボディサイズは、全長4,805mm、全幅1,895mm、全高1,635mm、ホイールベース2,850mmで、トヨタのbZ4Xと比較すると全長+115mm、全幅+35mm、全高-15mmです。
バッテリー容量は71.4kWhで、1充電あたりの航続距離が約450kmとなっています。駆動方式は、駆動力を前100:後0~前0:後100まで配分できる四輪駆動の「DIRECT4」を採用。前輪と後輪の出力は、前輪が150kW、後輪が80kWです。
なお、販売価格の発表はされておらず、今後の続報を待つしかありません。
まとめ
トヨタは、2021年12月のBEV戦略説明会で新しいBEVを16車種を公表しました。そのうち、2022年4月時点で販売が予定されているモデルは「トヨタ bZ4X」と「LEXUS RZ」の2車種のみ。目標である「2030年までに30車種、年間350万台を販売」を達成するためには、新しいモデルを次々と市場に投入しなければなりません。トヨタが今後どのようなBEVを発表し販売していくのか注目していきましょう。