日本でも知名度が高い輸入車といえばドイツのメルセデス・ベンツ、BMW、アウディの3社です。これら3つのメーカーはドイツ御三家と言われることもあります。また、それぞれ電動化モデルを新たなシリーズとして販売していることも特徴です。今回は、メルセデス・ベンツの「EQ」シリーズ、BMWの「BMW i」シリーズ、アウディの「e-tron」シリーズの代表的なEVラインナップを紹介します。
メルセデス・ベンツ「EQ」シリーズ
メルセデス・ベンツは、電動化モデルを「EQ」シリーズとして展開しています。電気自動車(EV)は車種名の頭に「EQ」が付けられ、プラグインハイブリッド(PHEV)は「EQ power」として販売してます。現在、日本に導入されているEVの「EQ」は、コンパクトSUVの「EQA」、ミドルサイズSUVの「EQC」の2車種です。今後(2022年度中)には、EQAとEQCの中間に位置するSUV「EQB」、ミドルサイズセダンの「EQE」、ラグジュアリーセダンの「EQS」が導入予定となっています。
EQC
EQCは、2019年7月に販売を開始した日本におけるメルセデス・ベンツ初の電気自動車です。デザインは、従来のフロントグリル部がブラックのパネルに変更され、ハイグロスブラック仕上げのサイドエアインテークを採用したEVならではのデザインとなっています。また、マルチビームLEDヘッドライトの内部はブラック地にブルーのアクセントが加えられ、メルセデス・ベンツの電動シリーズ「EQ」らしさを主張しているのも特徴です。EQCは、大径ホイール&タイヤとクーペのような流麗なスタイルが融合したSUVタイプのEVとなっています。
【EQCの主なスペック】
・全長4,770mm×全幅1,855mm×全高1,625mm
・航続距離(WLTCモード):400km
・バッテリー容量:80kWh
・最高出力:300kW(408PS)
・最大トルク:765Nm(78.0kgm)
・充電性能:急速充電(最大)110kW/普通充電(最大)6kW
・価格:960万円(EQC 400 4MATIC、2022年4月時点)
EQA
EQAは、2021年4月に発表された全長4,465mm、全幅1,835mm、全高1,625mmの取り回しがしやすいサイズのSUVタイプのEVです。航続距離は、WLTCモード410kmと日常使いにおいて十分な距離を実現しています。また、メルセデス・ベンツの特徴でもある安全性、操縦安定性、快適性、利便性、品質などを高いレベルで両立させていることもポイントです。デザインは、ミドルサイズ電気自動車SUVのEQCと同じように見えますが、ブラックのフェンダーアーチや高めの最低地上高によって、よりSUVらしいスタイリングとなっています。
【EQAの主なスペック】
・全長4,465mm×全幅1,835mm×全高1,625mm
・航続距離(WLTCモード):410km
・バッテリー容量:66.5kWh
・最高出力:140kW(190PS)
・最大トルク:370Nm(37.7kgm)
・充電性能:急速充電(最大)100kW/普通充電(最大)6kW
・価格:640万円(2021年4月発表時のEQA250の価格)
EQS(日本未導入、2022年デビュー予定)
EQSは、メルセデスEQ初のラグジュアリーEVセダンとして2021年4月にワールドプレミアされました。エクステリアは、EQシリーズらしいブラックのフロントパネル、横一文字のポジショニングライトやリアコンビランプ、クーペライクなスタイルを演出する半円形のサイドガラスエリアが特徴です。インテリアは、人間を中心に考えて設計されたシートが備わるファーストクラスの気品溢れる室内空間が広がっており、メルセデスEQのフラッグシップセダンにふさわしい仕上がりになっています。EQSは、現時点(2022年4月現在)で販売されていませんが、2022年中に発売を予定しています。また、日本のメルセデス・ベンツオフィシャルサイトでも情報公開していることから、日本へ導入される可能性が高いでしょう。
【EQSの主なスペック】
・全長5,216mm×全幅1,926mm×全高1,512mm
・航続距離:770km
・バッテリー容量:107.8kWh
・最高出力:245kW(333PS)
・最大トルク:568Nm(57.9kgm)
・充電性能:急速充電対応
※スペックはいずれも欧州仕様の数値
BMW「BMW i」シリーズ
BMWは、電気自動車を「BMW i」として展開しています。BMW iは、2011年に発足した持続可能なモビリティソリューションの展開を専門に行うBMWのサブブランドです。日本へ導入されているBMW iは、コンパクトモデルの「i3」、SUVの「iX3」と「iX」、4ドアクーペの「i4」の4車種。今後はフラッグシップセダンの7シリーズのEVにあたる「i7」も発表を予定しています。
iX
iXは、BMWのスポーツ・アクティビティ・ビークル(SAV)コンセプトに、サステイナビリティやインテリアの広さと快適性を加えた新しいEVです。エクステリアは、BMWの特徴でもあるキドニー・グリルを大型化し、スリムなヘッドライトやリアコンビランプを組み合わせることで、次世代のイメージを演出。サイズは、BMW X5の全長&全幅、BMW X6の全高で、なだらかに傾斜するルーフラインによってスポーティなプロポーションとなっています。インテリアは、ワイドなモニターや金属調のアクセントパーツにより、高級感あるラウンジのような雰囲気を演出しているのが特徴です。日本に導入されているiXは、76.6kWhバッテリー(航続距離:450km)を搭載し190kW/290Nmを発生させる4WDの「iX xDrive40」、111.5kWhバッテリー(航続距離:650km)を搭載し190kW/365Nmを発生させる4WDの「iX xDrive50」をラインナップ。また、111.5kWhバッテリー(航続距離:561km※欧州仕様)を搭載し455kW/1,100Nmを発生させる4WDの「iX M60」も2022年6月から市場投入すると発表されています。価格は、「iX xDrive40」が981万円、「iX xDrive50」が1,116万円となっています。
【BMW iXの主なスペック】
・全長4,955mm×全幅1,965mm×全高1,695mm
・航続距離(WLTCモード):650km
・バッテリー容量:111.5kWh
・最高出力:119kW(258PS)
・最大トルク:365Nm(37.2kgm)
・充電性能:急速充電(最大)150kW/普通充電(最大)11kW
※スペックはiX xDrive50の数値
i3
i3は、2014年に大都市圏向け電動駆動車として専用設計された4人乗りのコンパクトEVです。デビュー当初の航続距離は130km〜160kmと短く、2気筒ガソリンエンジンにより充電されるレンジエクステンダーをオプションとして設定していました。デビュー以降、改良やマイナーチェンジを繰り返し、現在(2022年4月時点)販売されているi3は、42.2kWhのバッテリーを搭載し、航続距離が360kmまで伸びています。デザインは、短いボンネットにガラスエリアが広く取られたキャビン、観音開きのドア、ガラスのバックドアが特徴です。また、フロントとリアのエンブレム周囲にブルーの差し色が入っているのもBMW iブランドを思わせてくれるポイント。インテリアは、フラットなダッシュボードにモニターが置かれるような造形になっています。また、内装にはリサイクル素材を使いながら、暖かみがあり上品な仕上げになっているのも特徴的なポイントです。価格は、EVの「i3」が560万円、発電用エンジンを搭載する「i3レンジエクステンダー搭載車」が610万円となっています。
【BMW i3の主なスペック】
・全長4,020mm×全幅1,775mm×全高1,550mm
・航続距離(WLTCモード):360km
・バッテリー容量:42.2kWh
・最高出力:125kW(170PS)
・最大トルク:250Nm(25.5kgm)
・充電性能:急速充電(50kW)/普通充電(3.7kW)
・価格:560万円
※スペックはi3の数値
i4
i4は、4ドアクーペの「4シリーズグランクーペ」に追加されたEVです。エクステリアは、4シリーズグランクーペと同じように、縦長の大型キドニーグリル、横長のヘッドライトやリアコンビランプを備え、流麗なルーフラインが特徴的なスタイリングとなっています。インテリアは、水平基調のダッシュボードやドライバー側に傾けられたセンタークラスターにより、シンプルながら上質感ある室内空間を演出。エクステリア・インテリアともにブルーのアクセントカラーが随所に施され、BMW iシリーズであることを感じさせてくれます。ラインナップは、250kW/430Nmを発生するモーターを搭載し、WLTCモードの航続距離604kmとなる後輪駆動の「i4 eDrive40」と、400kW/795Nmを発生するモーターを搭載し、WLTCモードの航続距離546kmとなる四輪駆動「i4 M50」の2タイプです。価格は、「i4 eDrive40」が750万円〜790万円、「i4 M50」が1,080万円となっています。
【BMW i4の主なスペック】
・全長4,785mm×全幅1,850mm×全高1,455mm
・航続距離(WLTCモード):604km
・バッテリー容量:83.9kWh
・最高出力:250kW(340PS)
・最大トルク:430Nm(43.8kgm)
・充電性能:急速充電(最大)150kW/普通充電(最大)6.4kW
※スペックはi4 eDrive40の数値
アウディ「e-tron」シリーズ
アウディは、電動化モデルを「e-tron」シリーズとして展開しています。2020年からSUVタイプの電気自動車「e-tron/e-tron Sportback」を皮切りに、4ドアのグランドツーリングモデルの「e-tron GT/RS e-tron GT」、コンパクトSUVの「Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tron」とEVラインナップを順次拡大。2022年3月には、市販を前提に開発されたA6 Avant e-tron conceptを発表していることからも、今後車種を増やしていく可能性が高いでしょう。
e-tron/e-tron Sportback
2020年に日本市場初の電気自動車としてデビューしたe-tron Sportbackは、スタイリッシュなクーペスタイルのミッドサイズSUVです。一方、e-tronは2021年に追加されたSUVタイプのEVで、荷室容量に軸足を置いたSUVらしいルーフラインを持つ使い勝手が良いEVとなっています。グレードは、e-tronとe-tron Sportbackにバッテリー容量71kWh(航続距離:316km、モーター出力:最高出力230kW/最大トルク540Nm)の「50」、e-tron Sportbackにバッテリー容量95kWh(航続距離:405km、モーター出力:最高出力300kW/最大トルク664Nm)の「55」をラインナップ。また、e-tron/e-tron Sportbackともに小型カメラにより車両側方の視界を確保するバーチャルエクステリアミラーが設定されているのもトピックです。価格は、SUVの「e-tron 50 quattro」が933万円〜1,108万円、クーペのようなスタイルの「e-tron Sportback」が1,145万円〜1,291万円となっています。
【e-tron Sportbackの主なスペック】
・全長4,900mm×全幅1,935mm×全高1,615mm
・航続距離(WLTCモード)318:km
・バッテリー容量:71kWh
・最高出力:230kW
・最大トルク:540Nm
・充電性能:急速充電対応/普通充電対応
※スペックはe-tron Sportback 50の数値
<h3>e-tron GT/RS e-tron GT
e-tron GT/RS e-tron GTは、迫力あるワイド&ローのボディやクワトロブリスターフェンダーなどにより、アウディらしさを押し出したグランドツーリングEVです。また、エアロダイナミクスを極限まで追求し、Cd値(空気抵抗係数)0.24を実現しているのも特徴となっています。駆動方式は、2つのモーターで四輪を駆動させるquattroです。バッテリー容量はどちらも93.4kWhで、出力の違いによりe-tron GTとRS e-tron GTに分けられています。e-tron GTは、最高出力390kW/最大トルク640Nmで、WLTCモードの航続距離が534km。RS e-tron GTは、最高出力475kW/最大トルク830Nmで、WLTCモードの航続距離が534kmです。価格は、e-tron GTが1,399万円、RS e-tron GTが1,799万円となっています。
【e-tron GT/RS e-tron GTの主なスペック】
・全長4,990mm×全幅1,965mm×全高1,415mm
・航続距離(WLTCモード):534km
・バッテリー容量:93.4kWh
・最高出力:390kW
・最大トルク:640Nm
・充電性能:急速充電(最大)150kW/普通充電(最大)8kW
※スペックは、e-tron GT quattroの数値
Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tron
Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tronは、電気自動車e-tron第3弾となるコンパクトSUV初のEVで、存在感のあるフォルム「Q4 e-tron」とスタイリッシュなクーペスタイルの「Q4 Sportback e-tron」の2タイプが設定されています。また、Q3とQ5の間に位置するコンパクトなボディサイズでありながら、インテリアの全長はQ5を凌ぐ長さになっているため、室内空間と荷室が上位モデル並みのスペースをとなっているのも特徴です。価格は、Q4 40 e-tronが599万円〜869万円、Q4 Sportback 40 e-tronが688万円〜716万円となっています。
【Q4 e-tron/Q4 Sportback e-tronの主なスペック】
・全長4,588mm×全幅1,865mm×全高1,614~1,632mm
・航続距離:516km
・バッテリー容量:82kWh
・最高出力:150kW
・最大トルク:310Nm
・充電性能:急速充電(最大)125kW/普通充電(最大)8kW
※スペックは欧州仕様の数値
まとめ
ドイツ御三家と呼ばれるメルセデス・ベンツ、BMW、アウディは、それぞれ電動モデルのブランドを設定し、徐々にラインナップを拡大しています。現在も次のコンセプトモデルやティーザー広告が発信されていることから、今後もEVのバリエーションは拡大していくでしょう。ドイツのプレミアムブランドが今後どのようなEVをデビューさせるのか、各メーカーの動きから目が離せません。