アメリカでは今、テスラに続き電気自動車メーカーの「リヴィアン」が話題になっています。米ナスダック市場の上場やアマゾンが7億ドルの投資をし10万台の電気トラックを発注したことで、現在注目を集めています。
この記事では、EVメーカー「リヴィアン」について紹介します。
2009年に創業したアメリカのEVメーカー「リヴィアン」
リヴィアンは、2009年に創業したアメリカの電気自動車メーカーです。リヴィアンでは、"アドベンチャー"を提供することに焦点を当てた車作りをしています。
ラインナップは、2018年に発表したピックアップトラック「R1T」と7人乗りSUV「R1S」の2車種。R1TとR1Sは、2021年12月時点で先行予約受付中となっています。
両モデルは、リヴィアン独自の「スケートボードプラットフォーム」採用しています。また、100kW以上の大容量バッテリーを搭載し、長い航続距離を実現していることも特徴。さらに、四輪にモーターを備える「クワッドモーター」や自動運転「レベル3」に相当する運転支援システムを搭載しているのもトピックです。
そして、リヴィアンが注目されている最大の理由は、Amazonやフォードなど大手企業から出資を受けている自動車メーカーだということでしょう。リヴィアンは、デリバリー前から注目されているアメリカンEVなのです。
2019年にAmazonやフォードなど大手企業が出資
リヴィアンは、Amazonやフォードなどから出資を受けたことで注目されています。2019年にリヴィアンは、Amazonから7億ドル、フォードから5億ドル、コックスオートモーティブから3億5,000万ドルの資金を調達しました。2021年7月のリリースによると、2019年以降の資金調達額は105億ドルに達したと発表されています。
車両が発売される以前に多くの資金を調達されていることからも、注目されている自動車メーカーであるといえるでしょう。また、リヴィアンはAmazonに電動配送バンを10万台を納車すると発表しています。
Amazon向けの電動配送バン10万台を受注
リヴィアンのAmazon向け電動配送バンは、安全性と効率を追求した車両で、10万台の納車を計画しています。
Amazonに納車される車両は、ドライバーの安全と快適さを重視し、シートの高さやグラブハンドルの形状・配置など細かな部分にまでこだわった設計となっています。また、リヴィアンとAmazonが協力して安全基準を設定し、外部カメラやレーダーなどによる自動緊急ブレーキや車線逸脱警報といった予防安全機能を装備していると公表されています。
さらに、視認性に優れるリアブレーキライトなどは、他のドライバーや歩行者などに認識してもらえるようデザインされています。リヴィアンのAmazon用車両は、2021年の第4四半期に出荷を開始される見込みとなっています。
リヴィアンのコンセプトや車種ラインナップ
リヴィアンは、2018年11月にピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」を発表しました。これらはリヴィアンの「人々が外に出て世界を探索するような刺激のある乗り物、技術、サービスを開発」するというコンセプトをもとに開発されたモデルです。
ここからは、リヴィアンの各モデルの詳細を解説します。
ピックアップトラック「R1T」
R1Tは、5人乗りダブルキャブのピックアップトラックです。デザインは、シンプルで存在感のあるエクステリアとウッドパネルやレザーなどを使った温かみのあるインテリアが特徴となっています。
エクステリアは、膨らみのある前後フェンダーやブラックのフェンダーアーチなどにより力強く、踏ん張り感あるスタイリングとなっています。また、"スタジアムヘッドライト"と呼ばれる立体的な縦型のヘッドライトがリヴィアンのアイコンとなっています。
R1Tには、リアドアとリアタイヤの間に「ギアトンネル(GearTunnel)」と呼ばれる収納スペースが設けられています。ギアトンネルは、スノーボード、ゴルフバッグ、ベビーカーなど収納できる350L以上の容量を誇り、ギアトンネルのドアは、荷物を荷台や屋根に積み込むためのステップとして利用することが可能です。
荷台には防水トノカバーが装備され、荷台の下にはフルサイズのスペアタイヤを入れることも可能な200Lほどの密閉型のアンダーボックスが備わっています。
その他にも、ギアトンネルにキャンプキッチンを装備することも可能です。R1Tは、アウトドアに最適なEVであるといえるでしょう。
インテリアは、直線基調のフラットなダッシュボードやベルトラインにウッドパネルやレザーなどを組み合わせ、温かみのある室内となっています。また、全面ガラス張りのルーフや持ち運びができるBluetoothスピーカーが装備されているのも特徴的です。
安全装備には「Rivian Driver +」が装備されます。これは、カメラやレーダーなどを使った予防安全システムや運転支援システムで、長距離・長時間の移動をサポートする機能も含まれています。
走行性能は、4つのモーターで駆動する4WDを採用しています。また、水深約1mまでであれば水の中を走ることも可能です。さらに、8つのドライブモードを装備し、車高、サスペンション、アクセルのレスポンス、4WDシステムなどをモードごとに調整。快適性やパフォーマンスを最適化します。
ボディサイズは、次のとおりです。
・全長約5,514mm(217.1インチ)×全幅約2,077mm(81.8インチ)×全高約1,986mm(78.2インチ)
・ホイールベース:約3,449mm(135.8インチ)
・最低地上高:約378mm(14.9インチ)
・アプローチアングル:35.5°
・デパーチャーアングル:30°
・ランプブレークオーバーアングル:26.4°
ボディカラーは、シルバー、ホワイト、レッド、ブラック、ブルー、グレー、グリーン、ガンメタ、イエローの9色がラインナップされています。
R1Tは、オフロード性能を重視したアメリカ車らしいピックアップトラックといえるでしょう。
SUV「R1S」
R1Sは、3列シート7人乗りのSUVです。デザインは、ピックアップのR1Tと共通ですが、座席数が増えたSUVであるため、車体後部の形状が異なります。
また、ピックアップトラックのR1Tにあるギアトンネルや荷台は備わりません。その代わりに、シートアレンジができる2列目・3列目シートを備えていることが特徴です。
シートアレンジは、2列目シートが40:20:40、3列目シートが50:50の分割可倒式となっています。2列目と3列目のシートを倒すとフラットで広大なラゲッジルームを作り出すことが可能です。また、8つのドライブモード、全面ガラス張りのパノラマルーフ、取り外し可能なBluetoothスピーカー、安全システムの「Rivian Driver +」などは、R1Tと同様に装備されます。
ボディサイズは次のとおりです。
・全長約5,100mm(200.8インチ)×全幅約2,077mm(81.8インチ)×全高約1,963mm(77.3インチ)
・ホイールベース:約3,075mm(121.1インチ)
・最低地上高:約378mm(14.9インチ)
・アプローチアングル:35.6°
・デパーチャーアングル:34.3°
・ランプブレークオーバーアングル:29.6°
ボディカラーは、シルバー、ホワイト、レッド、ブラック、ブルー、グレー、グリーン、ガンメタ、イエローの9色をラインナップしています。
R1Sは、ピックアップトラックのR1Tよりも全長やホイールベースが短く、最低地上高も低くなっていることから、ファミリーカーとしても使うことができるEVといえるでしょう。
両モデルに装備される8つのドライブモード
R1TとR1Sに装備される8つのドライブモードは次のとおりです。
・All Purpose(オートモード):走行状況に応じて車高やサスペンションなどを自動で制御するモード
・Sport(スポーツ):サスペンションを下げてハードなセッティングにし、コーナリングや加速性能を高めるモード
・Off-Road Auto(オフロードオート):未舗装の道路や砂利道などで使うオフロードモード
・Off-Road Rock Crawl(オフロードロッククルール):岩や急勾配を登るときに使用し、各ホイールのトルクを個別にコントロールするモード
・Off-Road Rally(オフロードラリー):砂利道などを高い速度域で走行するときのモード
・Off-Road Drift(オフロードドリフト):トラクションコントロールの介入を減らして雪や砂がある場所でドリフトを楽しむモード
・Conserve(節約モード):前輪駆動に切り替え、航続距離を伸ばすモード
・Tow Mode(牽引モード):四輪駆動を保ち続け、最大約5,000kg(11,000ポンド)までのものを牽引できるモード
基盤となる「スケートボードプラットフォーム」
リヴィアンのR1TとR1Sには、独自の「スケートボードプラットフォーム」を採用しています。このプラットフォームの特徴は、バッテリーパック、ドライブユニット、サスペンション、ブレーキ、サーマルシステムなどをホイールの高さより下に配置していることです。このパッケージングにより、プラットフォームよりも上に位置するキャビンスペースや荷室および荷台を自由に設計することが可能となっています。
サスペンションには、車高調整可能なエアサスペンションが備わり、高速道路での快適性やオンロードにおけるパフォーマンスを両立。また、優れたオフロード性能も実現しています。
パワートレインは、四輪のトルク制御を備えたクワッドモーターシステムです。四輪の動力を適切にコントロールことで、高速コーナリングから低速ロッククローリングまで、あらゆる状況でアクティブなトルクベクタリングと最大限のパフォーマンスを発揮します。またR1TとR1Sは、3秒で約96km/h(時速60マイル)、7秒未満で約160km/h(時速100マイル)に到達する加速性能を備えています。
3種類のバッテリーと160kWの急速充電
バッテリーは、105kWh、135kWh、180kWhの3種類をラインナップする予定となっています。販売開始当初は135kWhと180kWhの2種類を用意し、販売から6ヶ月以内に105kWhも選べるようになると公表されています。
航続距離は、バッテリー容量や乗車人数・積載量などによって変わるものの、R1Tが約505km(EPA換算314マイル)、R1Sが約508km(EPA換算316マイル)と発表されています。
これらのバッテリーは、最大160kWの急速充電ができるよう設計され、約30分で320km(約200マイル)分の充電が可能と発表されています。また、最大11.5kWの普通充電も可能です。
また、リヴィアンは独自の急速充電網「リヴィアンアドベンチャーネットワーク」も構築する予定となっています。リヴィアンアドベンチャーネットワークでは、R1TとR1Sを約20分で最大225km分(140マイル)の充電ができます。リヴィアン独自の充電ネットワークは、2023年末までに3,500ヶ所以上を設置する予定です。
レーダーやカメラなどを使った運転支援システム・予防安全機能
リヴィアン R1TとR1Sには、11個のカメラ、5個のレーダー、12個の超音波センサーによる安全機能や運転支援システム「Rivian Driver +」が標準装備されています。このシステムは、レベル3までの自動運転も可能としているのが特徴です。
リヴィアンに装備される予防安全機能や運転支援システムは次のとおりとなっています。
【運転支援システム】
・高速道路アシスト:高速道路の一部においてステアリングや速度調整を自動で行うシステム
・アダプティブクルーズコントロール:前方の車両と適切な距離を保つように速度を調整するクルーズコントロールシステム
・車線変更アシスト:高速道路における車線変更をサポート
・アクティブセーフティアシスト:衝突の警告やアシストをするシステム
・レーンキープアシスタンス:走行している車線を維持するシステム
・レーンデパーチャーワーニング:車線逸脱警報システム
・ブラインドスポットモニター:死角の車両を検出するシステム
・オートハイビーム:ヘッドライトのハイビームとロービームを自動で切り替えるシステム
・リアクロストラフィック警告:後退時に横切る車両や人がいる場合に警告するシステム
・パークアシスト:360°の物を感知して警告するシステム
・トレーラーアシスト:トレーラーを取り付けた状態での後退をアシストするシステム
【予防安全システム】
・前方衝突警告:前方の人や車の衝突を警告するシステム
・自動緊急ブレーキ:衝突被害の軽減または防止するために自動的にブレーキをかけるシステム
・ダイナミックブレーキサポート:衝突被害を軽減または防止するためのブレーキサポートシステム
コネクティッド技術
リヴィアンの車両は、LTEおよびWi-Fiでインターネット接続がされ、車両のソフトウェアを無線で更新するシステムが搭載されています。また、モバイルアプリの利用やスマートフォンの充電などをすることも可能です。
車載モニターには、センタータッチスクリーンや液晶メーターなどを装備しています。モニターには、マップ、音楽、ナビゲーションを中心に、その他アドベンチャーにフォーカスした機能が備わっています。
まとめ
アメリカの「リヴィアン」は、車両の販売を開始する前からAmazonやフォードなどから出資を受け、注目されている電気自動車メーカーです。
ラインナップされる車両は、本格的なオフロード性能を備えたピックアップトラック「R1T」とSUVの「R1S」の2車種。いずれも独自の「スケートボードプラットフォーム」と四輪をモーターで駆動するメカニズムを採用しています。また、容量が大きいバッテリー、運転支援システムや予防安全機能を備えていることも特筆すべきポイントです。
現時点(2021年12月現在)で、日本に導入されるという情報はありません。しかし、EVシフトが進む自動車業界において、リヴィアンは注目のEVメーカーであることに間違いないでしょう。