V2Hという言葉はなんとなく聞いたことがあるけど、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、V2Hとは何かを解説します。また、V2Hを導入するにあったてのメリット/デメリットや、対応している車種・工事費(補助金)などお金の面も詳しく説明します。
V2H(Vehicle to Home)とは
そもそもV2HはVehicle to Homeの略称です。
このV2Hとは、自動車(EVやPHEV等)に貯えられた電気を、家庭で使える電気に変換するシステムのことです。ちなみに、V2Hによって反対に家庭の電気を車に送り、車を充電することも可能になります。
ではなぜV2Hが必要なのかというと、EV等に貯えられた電気は直流ですが、家庭で使う電気は交流なので、双方向に送る際には電気を変換する必要があるからです。この電気の変換をするのがV2Hです。
このように車と家の電気を繋ぐから、Vehicle to Home(V2H)というのです。
V2Hのメリット/デメリット
メリット
①電気代を節約できる
V2Hを利用すると電気代の安い夜間に車に電気を貯めて置き、電気代が高い日中は車に貯めておいた電気を家庭で使うことで電気代の節約に貢献します。もちろん、日中にEVを自宅の車庫に置いておくことが前提です。
②停電時(災害等)が起こった際に、バックアップ電源として使える
車に電気が貯まっていれば家庭に電気を供給できるため、停電等でも電気を使うことができます。もっと分かりやすく言うと「車がモバイルバッテリー代わりになっている」みたいな感覚でしょうか。さらに車種によりますが、日産リーフでは家庭(3人家族を想定)で使う電気約3日分を一回の充電で貯めることが可能です。
③家庭用(200V)よりも早く車を充電できる
V2Hを利用すると直流電気で交流電気よりも効率的に電気を流すことができるため、早く充電できます。いざ車に乗ろうとした時に充電が足りない!ということを防ぐことができます。さらにこれによって、EVの大きなデメリットである充電に時間がかかるという問題を少しは解決できます。
デメリット
①初期費用がかかる
V2Hを導入する際の費用は補助金を利用しない場合、工事費とV2H機器を合計して最低でも約85万円ほどかかります(下記にV2H機器と補助金について詳細が書いてあります)。
さらにEVやPHEV等を所有していない方は、当該車両を購入する必要があります。これらの車は最低でも400万円以上かかります。
②初期費用の回収は数十年後
電気代の差額だけで上記の費用を回収するには恐らく12年~20年以上かかるかもしれません。少なくとも数年単位では不可能でしょう。ここまでの長期的なスパンが必要だと、元をとろうという考えだけでは、厳しいかもしれません。
③車・設備の劣化
年数が経つにつれて車や設備の劣化は避けられません。特に車のバッテリーは、V2Hによって充放電の回数が増えるため、劣化のスピードが通常よりも早まると言われています。
バッテリーの容量が減ると、貯めることができる電気量が減少します。すると、日中使える電気量が少なくなることや、充電のスパンが短くなることにも繋がります。
V2Hに対応している車種
EVやPHEVなら、なんでもV2Hに対応している訳ではありません。
下に対応車種を載せましたが、V2H機器のメーカーや仕様変更などによって、多少対応車種が変わる場合もあることは予めご了承ください。なお、現時点では輸入車は対応していないようです。
V2Hに対応している車種
日産
・リーフ
・e-NV200
ホンダ
・ホンダ e
三菱
・アウトランダーPHEV
・エクリプスクロスPHEV
・ミニキャブ バン/トラック
・アイミーブ
トヨタ
・プリウスPHV(メーカーオプション装着の必要有り)
・RAV4 PHV
V2H導入にかかる費用や補助金について
V2H機器の価格と工事費(2021年10月現在)
①V2H機器本体の費用と工事費
まず、工事費は施工業者によって異なりますが、一般的には約30~40万円ほどです。
そして、V2H機器は現在3メーカー(ニチコン・東光高岳・デンソー)が製造しています。
ニチコン
・VCG-663CN3(スタンダードモデル):398,000円(税別)
・VCG-663CN7(スタンダードモデル):448,000円(税別)
・VCG-666CN7(プレミアムモデル):798,000円(税別)
東光高岳
・CFD1-B-V2H1:オープン価格:750,000円(税別)
デンソー
・DNEVC-D6075:オープン価格:1,100,000円(税別)
このようにメーカーによって価格差がかなりあります。
詳しくはメーカーのホームページ等をご確認ください。
②補助金
V2HやEV等の車購入の補助金制度はとても複雑です。また、予算に限りがあるため終了してしまうものもあります。
今回は来年度も実施される可能性も含めて、執筆時(2021年10月現在)で終了しているものも含めて全て紹介します。
V2H導入に関する補助金
・次世代自動車振興センターのV2H補助金
:充放電設備費 上限75万円
:充放電工事費 上限95万円
:外部給電器 上限50万円(三分の一補助)
・経済産業省のV2H補助金
:充放電設備費 上限75万円(二分の一補助)
:充放電工事費 上限40万円
:外部給電器 上限50万円(三分の一補助)
環境省のV2H補助金
:充放電設備費 上限75万円(二分の一補助)
:充放電工事費 上限40万円(個人)/95万円(法人)
:外部給電器 上限50万円(三分の一補助)
補助金はV2Hの機器によって異なります。詳しくはメーカーのホームページ等をご確認ください。
地方自治体からの補助金
お住まいの自治体によって異なりますが、今回は東京都を参考例とします。
・EV等車両購入に関する補助金
:EV 上限30万円(個人)
:PHV 上限30万円(個人)
・V2H導入に関する補助金
:機器本体に対する補助金 上限30万円
車種や機器によって異なります。詳しくは自治体のホームページ等をご確認ください。
まとめ
今回はV2Hについて詳しくみていきました。V2Hには様々なメリットがあります。しかし、
単に電気代が安く抑えられるというだけでは導入の動機としては厳しいものがあります。つまり、V2H導入は金銭的なことだけではなく、災害時の備えや車への充電が早くなるなどの数値化しずらい所に大きな意義があるのかもしれません。そこに価値を見いだせる方が、V2H導入に向いているといえるでしょう。