2020年代になり、自動車のEV化に拍車がかかっています。コンパクトカーからパワフルなスポーツカーまでさまざまなタイプが出てきました。
高性能なEVにはデュアルモーター搭載モデルが登場しています。これからの高性能車は、V8からデュアルモーターになると言われています。
この記事ではパワフルなデュアルモーターについて解説していきます。
電気自動車(EV)のデュアルモーターとは?
電気自動車は、モーターでタイヤを駆動させ、車を動かしています。電気自動車のモーターは、1機~4機まで搭載することが可能です。1つのモーターで駆動するモデルを「シングルモーター」、2つのモーターで駆動するモデルを「デュアルモーター」、3つのモーターで駆動するモデルを「3モーター」、各ホイールにモーター1機が割り当てられた4WDモデルを「4モーター」と呼ぶのが一般的となっています。
市販されているEVの多くは、シングルモーターまたはデュアルモーターです。スポーツカー並みの運動性能を誇る高性能EVは、前輪用モーターと後輪用モーターを搭載しトルク配分をするシステムを採用したデュアルモーター主流となっています。
デュアルモーターにするメリットやデメリット
重量があるEVに重さがプラスされるモーターを複数装備する理由は何なのでしょうか。ここからは、デュアルモーターにするメリットとデメリットを解説します。
メリット
デュアルモーターの主なメリットは次の3つです。
・瞬時にトルク配分ができる:前輪と後輪に駆動トルクを瞬時に配分できる
・走行が安定する:複数のモーターで駆動することで路面状況が悪いときでも安定した走行ができる
・前後重量配分:前後にモーターを搭載するため前後の重量バランスがとりやすくなることがある
デメリット
デュアルモーターの主なデメリットは次の2つです。
・重量増加:モーターが多く搭載されることで重量が増加する
・航続距離が短くなる:モーターが増えると電力を多く消費するため後続可能距離が短くなる
運動性能を重視するならモーターの数は多い方が良い
デュアルモーターをはじめ、複数のモーターを搭載することで、車両重量の増加や航続距離が短くなります。しかし、鋭い加速やコーナリングなどの運動性能を重視する場合、モーターの数は多い方が有利です。
リマック ネヴェーラのようにモーターを4機搭載していれば、各ホイールごとのトルク配分を細かく調整できるため、優れたパフォーマンスが発揮できます。
デュアルモーターなどを採用する高性能EV
ここからは、デュアルモーターやトリプルモーターなどを採用している高性能EVの一部を紹介します。高性能EVを検討している方は車選びの参考にしてみてください。
ポルシェ タイカンターボS(Porsche Taycan Turbo S)
ポルシェ初の電動スポーツカーとしてデビューしたタイカン。4枚のドアと前後にトランクルームを持つセダンですが、ボディ後方に向かってなだらかにルーフが傾斜するクーペライクなスタイルになっています。ラインナップは、2WDのタイカン、4WDのタイカン4、タイカン4S、タイカンターボ、タイカンターボS、タイカン4クロスツーリスモ、タイカン4Sクロスツーリスモ、タイカンターボクロスツーリスモの8種類です。中でも最高峰のパフォーマンスを誇るのがタイカンターボSとなっています。
【ポルシェ タイカンターボSの主要スペック】
・サイズ:全長4,965mm×全幅1,965mm×全高1,380mm
・車両重量:2,330kg
・モーター:2モーター
・最高出力:460kW(625ps)/オーバーブースト時560kW(761ps)
・最大トルク:1,050Nm(ローンチコントロール時)
・航続距離(WLTPモード):416km
・バッテリー容量:93.3kWh
・価格:2,468万円
アウディ RS e-tron GT(Audi RS e-tron GT)
アウディ RS e-tron GTは、パワフルな電動駆動システム、快適な長距離移動を実現する乗り心地とキャビン、ダイナミックなハンドリングを兼ね備えたエレクトリック4ドアグランツーリスモです。アウディのエレクトリックグランツーリスモは、RS e-tron GTの他にe-tron GT quattroもラインナップしています。
【アウディ RS e-tron GT主要スペック】
・サイズ:全長4,990mm×全幅1,965mm×全高1,395mm
・車両重量:2,320kg
・モーター:2モーター
・最高出力:440kW(598ps)
・最大トルク:830Nm
・航続距離(WLTCモード):534km
・バッテリー容量:93.4kWh
・価格:1,799万円
テスラ ロードスター(TESLA Roadster)
テスラ ロードスターは、2021年10月時点で発売を開始していませんが、予約を受け付けているエレクトリックオープンスポーツカーです。詳細情報が公開されていないため、ここでは現時点でわかっている情報を掲載します。現在わかる情報だけでも他の高性能EVより優れているといえるでしょう。
【テスラ ロードスターの主要スペック】
・サイズ:(2021年10月時点では不明)
・車両重量:(2021年10月時点では不明)
・モーター:(2021年10月時点では不明)
・最高出力:(2021年10月時点では不明)
・最大トルク:10,000Nm
・航続距離(WLTCモード):1,000km
・バッテリー容量:(2021年10月時点では不明)
・価格:約2,270万円
テスラ モデルS Plaid(TESLA Model S)
テスラ モデルS Plaidは、モデルSの中でも優れたパフォーマンスを発揮するエレクトリックスポーツセダンです。その他のEVでは、2つのモーターを使うデュアルモーターがほとんどであるものの、モデルS Plaidは3つのモーターを搭載しています。
【テスラ モデルS Plaidの主要スペック】
・サイズ:全長約4,970mm×全幅約1,964mm×全高約1,445mm
・車両重量:2,162kg
・モーター:3モーター
・最高出力:750kW(1,020ps)
・最大トルク:公表データなし
・航続距離:637km(推定値)
・バッテリー容量:100kWh
・価格:1,599万9,000円
BMW i4 M50
BMW i4 M50は、BMW MとBMW iを組み合わせたBMW初の電動モデルです。2つのモーターを搭載するBMW M eDriveは、スポーツブーストモード時に400kW(544ps)を発揮します。BMW 4シリーズグランクーペがベースとなっているBMW M初のエレクトリックグランクーペは、不足のない航続距離、ゆったりとした車内空間、インテリジェントなコネクティビティ、実用性を兼ね備えるEVです。2021年10月時点では、プレオーダー(予約受注)状態となっているため、現在わかっている情報を掲載します。
【BMW i4 M50の主要スペック】
・サイズ:全長4,785mm×全幅1,852mm×全高1,448mm(掲載サイズはi4の数値)
・車両重量:(2021年10月時点では不明)
・モーター:2モーター
・最高出力:400kW(544ps)
・最大トルク:(2021年10月時点では不明)
・航続距離(WLTPモード):510km
・バッテリー容量:(2021年10月時点では不明)
・価格:未定
同等クラスの高性能エンジン車とデュアルモーターEVの比較
電気自動車の高性能モデルとガソリンエンジンの高性能モデルでは、どちらの方がパフォーマンスに優れるのでしょうか。ここでは、既に市販されているポルシェ タイカンターボSとポルシェ パナメーラターボS E-Hybridを比べてみます。
【ポルシェ パナメーラターボS E-Hybrid】
・サイズ:全長5,049mm×全幅1,937mm×全高1,427mm
・車両重量:2,425kg
・エンジン:3,996cc V型8気筒 420kW(571ps)/770Nm
・ハイブリッドモーター:100kW(136ps)/400Nm
・システム総合最高出力:514kW(700ps)
・システム総合最大トルク:870Nm
・燃費:約34.5km/L
・価格:2,973万円
【ポルシェ タイカンターボSの主要スペック】
・サイズ:全長4,965mm×全幅1,965mm×全高1,380mm
・車両重量:2,330kg
・モーター:2モーター
・最高出力:460kW(625ps)/オーバーブースト時:560kW(761ps)
・最大トルク:1,050Nm(ローンチコントロール時)
・航続距離(WLTPモード):416km
・バッテリー容量:93.3kWh
・価格:2,468万円
パナメーラターボS E-HybridとタイカンターボSを比較してみるとサイズはほぼ同じです。車両重量は、2つのパワーユニットを搭載するパナメーラターボS E-Hybridの方がタイカンターボSより100kgほど重くなっています。最高出力や最大トルクについては、パナメーラターボS E-HybridよりもタイカンターボS(ローンチコントロール時)の方が上回っていることがわかります。
このように数値を比較してみると、高性能EVは高性能ガソリンエンジン車と同等以上の性能であるといえるでしょう。
まとめ
高性能EVにデュアルモーターが採用されているのは、モーターが瞬時に発生する最大トルクを四輪に伝えた方が、高い運動性能を発揮できるからだと言えます。そのため、高性能EVは2つ以上のモーターを搭載した四輪駆動を採用しているのです。2021年10月時点で、3モーターのスポーツセダンや4モーターのハイスペックスポーツEVが販売されていることからも、今後高性能EVは各ホイールにトルクを正確に分配できる4モーターが主流になる可能性が高いといえるでしょう。